自分たちの中高生時代にスマホをはじめとするデジタルデバイスがなくて本当に良かったと思っている田中です。
今日は多くの保護者の悩みのタネ、そして塾生にとっては親に没収されたり制限かけられたりトラブルになったりするけれど大好きで仕方がない「好きに使わせろ!」の代表的なもの、スマートフォンをはじめとするデジタルデバイスに関してつらつらとやっていきます。
いつも言ってますが、これはあくまでも私の見解であり、塾を代表したものではありません。あしからず。
まずは塾生側にとって残念なお知らせです。
イギリスの研究機関「The London School of Economics」が発表したデジタルデバイスと学力に関する調査結果で、学内でデジタルデバイスの使用を禁止したところ、生徒たちの成績が向上したという結果が、すでにこの世には出ています。
この調査はバーミンガム、ロンドン、レスター、マンチェスターの高校で実施され、校内での使用を禁止した前後の学力テストを比べたものです。
16歳以上の生徒においては、テストの点数が禁止前よりも6.4%向上していることがわかりました。
「なんだ、100点満点のテストで6、7点しかかわらないじゃないか」と考えるかもしれませんが、5教科なら35点分の差です。中間テストや期末テストで35点分増えると考えれば、それは小さな差でしょうか?
「テクノロジーの進歩は一般的にパフォーマンスを向上させる効果があるが、同様に潜在的な欠点がある」と多くの研究者が指摘しています。
昔であれば自宅や友達の家の電話番号は記憶していました。親の携帯番号も暗記して覚えていたものです。しかし今じゃ、塾名簿や北辰申込書の住所欄空白の際にその場で確認しても、自宅の住所すらわからない塾生がいます。
「そんなものスマホに入れておけばいいだけでしょ」
確かにその通りです。しかし、その単純な数字の「覚える」という作業は低年齢のとき、脳が飛躍的に成長する際に得られたものです。大人になると苦労するものも、子どものときは難なく覚えることができます。脳が出来上がるにつれて、関連性をもたせて記憶していく必要がありますが、低年齢時はその必要すらありません。
子育ての際、子どもが静かになるからと安直にデジタルデバイスを与え、好き放題に使わせて貴重な時間を子どもから奪った結果、思春期に子どもが同世代と比べて覚える能力が低い、すなわち学力差として反映されるのは、残念ながら本人だけの問題ではありません。育ってきた環境はそれだけ大事で、手間暇をかけなかった結果に返ってきたものに関しては、親も責任をとるべきです。
楽だからと与えたくせに都合の悪い結果を見て奪う親。子から見れば、思春期ともなると憎しみの対象になりますよ。
偉そうに言ってますが、私自身も道を覚えたりする力は明らかに衰えたと感じています。便利ですからね、グー〇ルマップさんは。
電車のルートなども乗換案内のアプリに任せっきりだと、路線図との関連性も薄くなり、地理的にどのあたりにいるのかすらわからない人がいるのも頷けます。
「スマホ依存」には生活習慣の乱れや集中力・コミュニケーション力の低下といった問題の原因とも表裏一体になっています。それが思春期の子どもなら、その影響を受けやすいというのも言うに及ばず、でしょう。
丸一塾は幸か不幸か、スマホに関してそこまでの厳しい規制を塾内ではかけていません。
他塾や予備校であれば校内での使用不可、ルールを守らないものに関しては没収(没収することを事前に規約で定めて親に承諾を得ているところもありますよ)、そもそも持ってくること自体を禁じている塾もあります。
ただ社会に出れば、どんな形であれデジタルデバイスは使用することになるので、適切な距離感を自分で作って付き合っていく必要はあると思います。
デジタルデトックスなんていう言葉もありますが、大人になればスマホと関わらなくていい世界が欲しいぐらいです。
塾用LINEなんてものを代表が作ったときは頭を抱えましたね。
いつでもどこでも営業時間関係なく連絡が来ることは目に見えており、実際そのようになっています。おかげで私は休みの日でも全く精神的に休みません。
労働基準法では、休憩時間や休日は業務に関連する一切のものごとと関わってはいけないそうですよ。今の世の中じゃ、誰がこんなもの守れるんですかね。
ただ一方で私の立場上、なるべくこの法律を守らなきゃいけないので、誰かに被らせてしまう負担は自分で背負うしかないのです。そうやって人間は潰れるか潰れないかの瀬戸際で生きています。
たまには毒を吐いておきましょう(笑)
今後も塾用LINEはご利用ください。サービスの一環ですからね。そういうことやらないと生き残っていけませんから。
ちなみに休みの日は、あえてスマホから離れるように雪山にいけば携帯しませんし(遭難したときはオールドスタイルでどうにかします)、バイクに乗ってればいじることも出来ませんから万々歳です。そうやって意図的に距離をとらないと離れられないのは大人の悲しいところでもありますね…
脳は、もともとマルチタスクをこなすのが不得意であり、1つの出来事に対して集中することを得意としています。
社会に出て「使える」と言われる人たちは、このマルチタスク処理能力が他より優れている人がよく該当します。しかしそれは本来、人間が不得意であるはずの能力を無理に使っている人も中には含まれており、そこに対して精神的な負担が降り積もった結果、様々なことに気が配れる繊細な人ほど精神を壊しやすいというのもまた事実です。
デジタルデバイスから与えられる、昼夜を問わない刺激(動画、音声、画像、言葉、それらに伴う感情的な起伏も含む)は、脳に対して過剰な負荷を与え続け、結果的に若い人間ほど多くの障害をもたらすことがすでに明白となっています。
ちなみにこれ、年齢をそれなりにとった方には逆に良い効果をもたらします。
刺激が薄れてしまっている高齢者は、そこから認知症へと向かってしまうのですが、デジタルデバイスを使いこなすことで脳を活性化させるそうです。
身近な実例をご紹介すると、私の祖母たち(父方、母方とも)は戦争経験者でありながら時代の流れに負けずに携帯電話、そしてスマホへとうまく対応してLINEで写真を送るぐらいのことはできています。
結果、同じ世代の人間と比べて明らかに認知症の進行が遅れています。
一方で祖父たち(父方、母方とも)は、どちらかというと時代の流れに対応できず、祖母たちと比べて認知症の気配ははやい段階からありました。
もちろん男女差や個人差はあるのですが、デジタルデバイスが脳の活性化、さらには生活の充実さを増すものになっているのです。
デジタルデトックスがらみですが、夏期合宿中、2日半は完全にデジタルデバイスと関わらない期間だったので良いきっかけになったはずです。
参加している塾生にとっては、講師が好きに使っているのを見たり、テストに合格した塾生が3日目にはやめに返却されているのを見て、憎しみが湧いたことでしょう。だからってどうすることもできません。ご自分の準備不足を嘆いてください。ざまあ(笑)
スマホがない3日間で、塾生たちはお互いによくしゃべったりしたと思いますよ。
非日常の宿泊、全く関わりがなかった他校舎の塾生や講師、高3~中2まで。
普段なら関わることがない多くの人間とコミュニケーションをとったはずです。
特に他学年、中学生、高校生、そして大学生講師との交流はお互いにとってよい経験となったことでしょう。
友達になれば合宿後、距離が離れてからはそれこそスマホの出番です。
どこかで遊んだりすることは個人の自由ですからね。そうやって交友関係が広がるのは良いことであり、財産だと思います。
今後も人類とデジタルデバイスはうまく付き合っていく必要があります。
大人で扱いに失敗している人もいる中で子どもに教えるというのもおかしな話ですが、【車の助手席でダッシュボードに足をあげて、嫁や旦那に運転させて自分はその姿勢でスマホいじくりまわしてる】みたいな態度がどれだけマズイか、というのは教えてあげられるはずです。
そもそもわが身がそんな様子の方は、残念ながら将来ちゃんと返ってきますよ。
自分の思う通りには育たないくせに、似てほしくないところはちゃんと似る、それが子どもってものですからね。
学校側からもデジタルデバイスが配布される時代となっています。
「勉強のために」与えられているものですが、まあうまくかいくぐってゲームするのが子どもですからね。授業中の暇つぶしにYouTube見てる、なんて話もよく聞きます。
かさばらず、膨大なデータを1つのタブレットに収納でき、場所を問わず勉強できるという利点はありますが、記憶定着という部分では旧式の勉強の方が効果あり。
モノは使いようですが、それぞれが得意不得意とするものをよく把握して勉強に役立てるべきなんですけどね。その理解は、学校ではなく育つ環境、つまり家庭での積み重ねの方が影響しています。
大人から子に対して「教えてやる」も間違いです。
「互いに学ぶ」という心意気を常に持とうと思う、秋の日でした。